「給与の源泉所得税の計算は分かるけど賞与の場合はちがうの?」
「そもそも源泉所得税ってなに?」
という人向けの記事です。
会社員であれば毎月給与をもらい、賞与をもらう人もいます。
でも、色々と差引かれて手取額は思ったよりも少なくなりますよね?
その差引かれるものに「源泉所得税」があります。
簿記の学習では学びませんが、実務ではこの源泉所得税はいくらか計算するいわゆる「給与計算」をすることがあります。
「給与ソフト・エクセルファイルで自動計算されるでしょ」
「別に覚える必要はないや!」
と思うかもしれません。
しかし、経験上自分がまったく分からないものが自動計算されても、どうしても苦手意識を持ってしまいます。
苦手意識を持っていると「なんかおかしいなー」と思ってもそのままスルーしてしまったりするようになるので、ミスもしやすくなってしまいます。
もちろん、計算方法を丸暗記する必要はありませんが、知っていると給与に対しても苦手意識がなくなるので、実務でもつまずきにくくなります。
給与と賞与では源泉所得税の計算方法は変わるので、今回は賞与の源泉所得税の計算に役立つ
「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」
の見方を分かりやすく紹介します。
給与と賞与では異なる・源泉所得税のもとめ方
給与と賞与では源泉所得税の計算方法が異なります。
給与 → 給与所得の源泉徴収税額表(月額表)
賞与 → 賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表
というように、計算のもとになる資料に違いがあります。
給与所得の源泉徴収税額表(月額表)は特にむずかしい計算する必要はなく、条件が合う数字を表から見つけるだけですが、
賞与の場合は税率をかけて計算します。
少し分かりにくいと思うので具体例も使って見方を紹介していきます。
「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」の見方
名称から何だか難しそうに感じてしまうかもしれませんが、内容は簡単なので安心してください。
イメージしやすいように具体的な計算例も使って説明するので一緒にみていきましょう。
源泉所得税月額表に必要な情報は以下の4つです。
・社会保険料等の控除額後の賞与の金額
・甲欄または乙欄か
・扶養親族等の数
この情報から、賞与から差引く源泉所得税を求めることができます。
☆それぞれの意味が分からないという人は以下の記事を
読んでみてください。
基本的なことを分かりやすく書いています。
「前月の社会保険料等控除後の給与等の金額」の求め方
まず賞与の源泉所得税は
「前月の社会保険料等控除後の給与等の金額」
を計算します。
前月の給与が
給与 220,000円
健康保険料 10,824円
厚生年金保険料 20,130円
雇用保険料 667円
とすると
「前月の社会保険料等控除後の給与等の金額」は
220,000円 - (10,824円+20,130円+667円)
=188,37円
となります。
では、次に「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」の見方を説明していきます。
甲欄の場合
例えば、
賞与 220,000円
健康保険料 10,791円
厚生年金保険料 8,236円
雇用保険料 270円
甲欄
扶養親族等 0人
の場合をみていきましょう。
まずは、社会保険料等の控除額後の賞与の金額を求めます。
社会保険料 = 健康保険料+厚生年金保険料+雇用保険料
= 10,791円+8,236円+270円
= 19,297円
なので、社会保険料控除後の賞与の金額は
賞与 - 社会保険料 = 220,000円 - 19,297円
= 200,703円
となります。
次に、甲欄か乙欄かを確認します。
今回は「甲欄」なので青色の枠をみます。
次に,扶養控除親族等を確認します。
今回は0人なので、緑色の枠をみます。
そして、
「前月の社会保険料等控除後の給与等の金額」188,37円
がおさまる
青枠内の「以上」「未満」の範囲を探します。
そうすると、赤ラインの「79千円以上、252千円」が
ちょうどおさまります。
赤ラインと青枠と緑枠が重なる利率を確認します。
オレンジの★マークの4.084%が使用する利率になります。
利率の欄には「賞与の金額に乗ずべき率」と記載されていますが、社会保険料が差し引かれていれば、「社会保険料控除後の賞与」に利率をかけるので、注意してください。
今回の例だと賞与220,000円に利率をかけてはダメです。
賞与から社会保険料を控除した金額 × 利率 = 源泉所得税
200,703円 × 0.04084≒ 8,196
が賞与から源泉徴収する源泉所得税となります。
乙欄の場合
乙欄の場合は甲欄とかなり変わります。
まずは表を見て下さい。
「扶養親族等の数」の欄がないことに気付きましたか?
乙欄は「扶養親族等の数」が何人でも源泉所得税額が変わることはありません。
つまり、甲欄と比べて源泉所得税は高くなる設定になっています。
では、さっそく源泉所得税を計算していきましょう。
「前月の社会保険料等控除後の給与等の金額」は188,37円なので、青枠内でおさまる範囲をみていきます。
そうすると、222千円未満が該当します。
赤ラインをたどってみると、オレンジの★マークの10.210%が使用する利率になります。
賞与から社会保険料を控除した金額 × 利率 = 源泉所得税
200,703円 × 0.1021 ≒ 20,491
が賞与から源泉徴収される源泉所得税となります。
源泉所得税が発生しない賞与の金額
賞与が68,000円未満の場合は源泉所得税は発生しません。
実務ではいくら未満だったら源泉所得税は発生しないという知識をみにつけておくと良いです。
賞与・給与がいくら以上になると源泉所得税が発生するのかは気になるポイントです。
「ちなみに、いくら以上になると源泉所得税は発生するの?」
と聞かれて即答できるとカッコイイですね。
ちなみに、甲欄の給与の場合は88,000円未満であれば源泉所得税は発生しません。
まとめ
いかがでしたか?
今回は「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」の見方について説明していきました。
おさらいですが、
賞与から差引く源泉所得税を求めるのに必要な情報は以下の4つです。
・社会保険料等の控除額後の賞与の金額
・甲欄または乙欄か
・扶養親族等の数
この4つの条件が重なる利率を探します。
給与の場合と大きく違うのは
・前月の社会保険料等控除後の給与等の金額
を使って求めることです。
「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使って源泉所得税を求める時の注意点は
「賞与の金額に乗ずべき率」
と記載されていますが、社会保険料が発生していれば、賞与から社会保険料を差引いた金額をつかうことです。
これを忘れてしまうと金額が大きく変わってしまうので、要注意です。
源泉所得税が高くなってしまいます。
(その分手取りが少なくなる)
給与計算は簿記の学習では学ばないので、入社してからつまずくポイントにるかと思います。
給与ソフトやエクセルシートで自動計算されても、その計算過程がまったく分からなかったらどうしても苦手意識がでてしまいます。
そうなると、いつも不安を感じながら作業をするので、ミスをしてしまいます。
もちろん丸暗記する必要はないですが、
「こんな計算で求められているなだな」
と分かっておくだけでも苦手意識はなくなります。
ぜひ、基本的なことはこの記事で覚えてみてください。
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